ときどきoffbeat

みつける・かけよる・つまずく日々

「農家の直売所」は儲かるかどうかあなた次第

agri.mynavi.jp

農業総合研究所のPR的な記事。 販売価格の65%が生産者へ、と聞くと、なんでそんなに手元に残るんだ、そんなに残るなら安くしろ、と思いそうだ。 そんなにうまくいくはずはない。細かく見ていく。

1:集荷場に野菜を持ちこむ 全国70か所の集荷場まで持ち込むのは、当然ながら自分の労力。 バーコードを発行し、貼付するのも自分の労力。 集荷場が遠い人は自宅でバーコード発券できるのはいいかも。

スーパーにならぶ加工食品などは、 ・バーコードはパッケージに予め印刷する(JANコードを取得する) ・運ぶのは自身(運送屋に委託、自社便など)

2:農業総合研究所のトラックでスーパーの物流センターへ 集荷場を市場などと置き換えれば、ふつうの物流と変わらない。

3:各スーパーの物流センターから各店舗へ

各スーパーの物流センターに届けられた農産物は、各店舗へ配送されます。翌早朝には到着し、開店までに青果担当者が農産物を陳列します。原則として、出荷から1日で店舗に並ぶので、より新鮮な農産物を消費者に届けることができる仕組みになっています。

市場あたりだと、 ・生産者が出荷する ・せりの時間まで待つ(早朝、市場によってはプラス夕方〜夜) ・せりのあと、それぞれのトラックへ荷物を分ける ・物流センターへ ・店舗へ配送 という流れが一般的と聞く。

早朝のせりにかけるためには前日納品となる。 せりを待って出荷となるため、せり〜出荷にプラス1日かかるのだ。 ここの1日のタイムロス(=生産物の劣化などを生む)を避けている、ということが言いたいのだろう。 「原則として」というのは物流センターから各店舗、各店舗バックヤードからの出荷のタイミングを示唆していると思われる。

中間マージンを大幅カット?

については「何と比べて」なのか疑問だ。 この記事では記載していないが、本件は直売所形式なので、委託販売を採用していると思われる。 委託販売ということは、売れた分だけの売上が計上される、売れなかった分は廃棄である。 とすると、店舗は仕入れリスクが小さい。(少なくとも事前にお金が出ていかない) また、箱買いであれば店舗が行うだろうパッキングのコストもいらない。 さらに、店舗、というかバイヤーがもっとも頭を悩ませるであろう、 調達(このスペースをどう埋めるか)のバランスを考えるにあたっても、選択肢が増えるので楽になる(はず)だ。 もっといえば、価格交渉がいらない。高くて売れなければ放っておけばいい。 (なお、どうやら店頭は値下げ権も持つらしい…一定の条件があるだろうが)

これって、単に店舗が考えなくなった分の手間賃を削除する、というだけであって、 生産者が自分で考えることが増えただけのことだ。 個別の宣伝資材(POPやシール)を考える、作る、…いわゆるメーカーがマーケティング活動としてやってきたことである。 高度成長期で量を求められるなか、小さい耕地面積でとにかく作ることに専念してきた農業生産者が直面するマーケティング活動。

まとめると、 宣伝資材、美しくパッキングする、出荷量の算出、出荷場までの納入などのコスト→販売価格に含めてね、 という、加工品ならごくあたりまえの商流になる。 販売価格の35%はスーパー(販売手数料)と農業総合研究所(物流センターまでの流通コスト、システム関連費)、 スーパーはほぼリスクがないと思われる。農業総合研究所はほぼ固定費。参加者が増えることで利益率が上がる。

私が農業総合研究所のバイヤーだったら、品質が高く個撰に切り替えたい果樹生産者を狙うかな…